はじめに
2021年に登場した『MacBook Pro 16インチ』のレビューをしたい。処理性能は控えめだが、筐体の堅牢さ、ディスプレイの美しさ、キーボードとトラックパッドの操作性といったハードウェアの質が極めて高く、その完成度に満足してしまった。
パフォーマンスに言及している箇所以外の話は、M2 Pro / Max や M3 無印 / Pro / Max、M4 無印 / Pro / Max の購入を検討している人も参考にしていただきたい。
性能は「十分」、ハードウェアの品質は「圧巻」
パフォーマンス面が最重要という人にとっては、少し物足りないかもしれない。しかし、筐体の作り込みやディスプレイの美しさ、キーボードの打鍵感(これは人によると思うが)が抜群で、これらの要素に満足させられる。特に、長時間作業を行う人にとっては、快適な使用感(というのは単純に処理性能が高いだけでは得られないユーザーエクスペリエンスの高さ)がメリットとなると感じる。
パフォーマンス:十分だが「完璧」ではない
M1 Pro / M1 Maxの実力
2021年モデルの16インチMacBook Proは、Apple独自の『M1 Pro』または『M1 Max』チップを搭載している。私はM1 Proモデルを使用しているが、日常使用で特にストレスに感じる箇所はない。
日常のブラウジングや動画視聴はもちろん、画像編集や動画編集ストレスなくできる。(ただし、動画編集は単なるYoutube的動画の編集(テロップ編集やカット編集など)を指すことにする。AfterEffectやDavinci ResolveのFusion等のコンポジット機能をストレスなく行うことは残念ながらできない。)
また、3Dレンダリングのような高負荷作業を行うと、処理の重さを感じる。例えば、Blenderで高解像度のアニメーションをレンダリングする際には、1フレームあたりの処理時間が数分から数十分かかることもあり、非常に非効率だ。本当にレンダリングはただの苦行でしかないのでおすすめできない。
このように、ある程度までの作業ならストレスなく、むしろ気持ちよく作業できる。しかし、ある程度の高負荷がかかる作業となった途端に音を上げ始めて使い物にならなくなる。
GPUが帯に短し、襷に流し
前項で、コンポジットとレンダリングには厳しいという旨の話をしたが、全てはGPUの性能不足に由来する。具体的には、内蔵グラフィックの性能ではAfter Effectsの重いエフェクトやBlenderの物理演算を伴うアニメーションのプレビューがスムーズに行えない場合が多い。内蔵グラフィックとしては健闘しているが、外付けGPU(dGPU)には大きく劣るのが現実。
やはり、このような(特にGPU)負荷の高い作業をする際は外付けGPUを使える Windows(かLinux)を使うべきなのだろう。
参考として、BlenderのOpenDataのリンクを貼っておく。
M1 Pro 16 cores のスコアは 482 である。これはGTX1070(スコアは535)以下のスコアしか出ていない。GTX1070といえば、2016年に発売された当時のミドルハイクラスである。
実際問題、BlenderはGeforceシリーズを優遇しているきらいがあるので公平な比較かといえば疑問が残るが、8年前のGPUには勝っていてほしかった…
充電に140W対応のアダプターを使う必要があるのか?
Macbook Pro(特に16インチ)を取り出してまずはじめに驚くのは、ACアダプターの大きさだろう。
Macbook Pro 16インチには、140W充電に対応したとてつもなく大きいACアダプターが付属する。(上の画像ではMacBook Airに付属しているACアダプターとの比較をしている。もちろん上がMacBook Airのもの)
果たして、この大きさのACアダプターを使う必要があるのかを以下の記事で解説している。
動作の安定性は抜群
これはmacOS由来だと思うが、動作の安定性は非常に高い。冗談抜きで、これまでのWindowsPCでは頻繁に発生していた強制終了やクラッシュが、MacBook Proではほとんどない。少なくともOSごと巻き込んでフリーズして強制シャットダウンからの再起動を経験したことがない。
この一点だけでもmacに乗り換える価値があると思っていて、ハードウェアスペック表には書かれないメリットであると思う。
この安定性は、OSとハードウェアが緊密に統合されているAppleの強みである。(これはiPhoneにも言えることだが)
ゲームプレイは厳しい
この一行で十分でしょう。ゲームはできません、はい解散。
ハードウェアのクオリティが圧倒的
ディスプレイが美しい
MacBook Proのディスプレイは普通に問題なく綺麗。感動するかと言われれば別(16インチほどの大きさで感動しろというのにも無理がある)だが、いつも隣で並べてあるBenQのモニターが霞むほどには美しい。
キーボードとトラックパッドの快適な操作感
MacBook Proのキーボードはしっかりとした打鍵感があり、快適にタイピングできる。少し深い
本命はこちらのトラックパッドで、他の追随を許さないレベルの完成度である、精度と滑らかさが別次元。WindowsノートPCのトラックパッドとは別物だと考えてほしい。今、これを読んでくれているWindowsノートPCユーザーの皆さんには一回この気持ちよさを体験していただきたい。まるで自分の指で直接画面を操作しているかのような感覚を覚える。インターフェースそのものの存在を知覚させない、これがインターフェースの完成系なのだと感じた。
スピーカーの音質がノートPCの域を超えている
MacBook Proのスピーカーは、ノートPCのものとは思えないクオリティの音を出してくれるので、スピーカー必要ない説を勝手に提唱している。デスクからスピーカーを排除することに成功した。
片手でディスプレイが開ける
細い点であるが、キーボードの下側(こちら側)に窪みがある。ここに指を引っ掛けることで片手でディスプレイを開けることができる。意外と便利。
フルサイズのSDカードスロットとHDMIポートがある
HDMIポートは付いているパソコンが多いので特筆する点ではないが、最近SDカードスロットが付いているパソコンをあまり見ない。この点は嬉しい。
まとめ
結論として、質感と操作感を重視するなら、買い。パフォーマンスは『爆速』ではないが、ハードウェアの完成度が非常に高いため、長く使える安心感がある。特にトラックパッドのクオリティは、他のノートPCとは一線を画している。
もうしばらくMacBookを買い替えることはないだろう。ありがとう、Apple。